お上にもの申す-貸切バス新制度(2) 消費者への周知徹底求める
要望書の作成、提出は6月12日に開いた近畿地方支部長連絡会(議長・永野末光ANTA大阪府支部長)で決めた。近畿6支部の支部長が、各支部会員の意見や声を集約する形で情報交換を行い「会員の多くが新制度に困惑している中、いま支部長として動かなければ、何のための組織なのかわからない」。全員一致でANTA本部を通じ国交省などへ要望していくことにした。
業界浮沈への危機感
意見交換会で特に問題になったのは、新しい制度が周知できていないこと。運輸局などの呼びかけで6支部ごとに4月以降行った説明会でも、会員から挙がった質問のほとんどは「新運賃・料金制度は国から一般消費者に向けて告知してくれるのか」という内容だった。それに対する国側からの回答は「予算がない」との一点張りで、このままでは顧客に説明がつかない上、業界全体の浮沈に関わることになると危機感を持った。
兵庫県支部の世良純一支部長は、神戸市内の公立中学校が県北部へスキー合宿に行っていることを事例に、周知できていない現状を話した。
「神戸市内だけど雪道を走るので、北部のバス会社を手配している。新制度下では従来のバス代が倍になってしまう。ところが、教育委員会も学校の先生もそのことをまったく知りません」
そこで兵庫県支部では、県観光振興課に実状を伝え、観光振興課長名で県内の教育委員会などへ周知文書を流してもらった。「スキー場周辺の民宿などもこの事実を知らない。ある日突然バスが来なくなって宿を閉めなくてはならない事態になるかも」。地域観光が壊滅する状況もあり得ると指摘した。
奈良県支部の中川宜和支部長は、観光立国の視点から疑問を抱く。「国はインバウンドを2020年に2千万人にすると言っているが、この制度は真逆。バス離れを助長して人数が伸びるわけはない。バス離れの結果、渋滞が起こる。40人がバスから自家用車に振り替えるとどうなるか。1台のバスが20台のマイカーになる可能性もある」。