会員目線で改革を-日本旅館協会・針谷新会長に聞く(2) 3つの使命で業界へ貢献
―会長に選ばれたご感想は?
光栄です。協会のお役に立たなければいけないとひしひしと思っています。
会費以上の価値を提供
僕は自分の使命だと感じたら、逃げることなくやらなければいけないという考え方でビジネスも、業界活動もやってきました。でも、その能力があるのかは自分ではわかりません。わからないけれども、少なくとも他の人に「お前がいい」と言われればやる。「お前にその資格はない」と言われれば仕方がない。それは皆さんが判断していただき、全力を尽くすということだと思います。
出処進退は自分で決めるものです。だけど、なるときに自分でなりたいということは違う。過去ずっとそう思ってきました。23歳から業界活動をしていますが40年間、自分からやらせてくれと言ったことはありませんでした。業界の役職で自分から手を挙げたのは今回が初めてです。
―よほどの思いがあったのですね。
支援してくれるという人たちがたくさんいましたので、手を挙げないことはその人たちを裏切ることになりますし、僕だったらこうするというある種の自負がありました。業界、当協会にとっていいことなのではないか、と。
会費以上の価値を皆さんに提供するというのが僕の一つの使命だと思っていますので、それを感じてもらえるような体制づくりをしていきます。
―それを凝縮したのが「3つの使命((1)日本旅館協会の正常化(2)会員のための事業推進(3)観光立国に貢献する団体への成長)」なのですか。
1つ目は、協会内部が正常な状態だとは言えない状況だったので、これは当然解決をしなければいけません。
2つ目は、会費を払っている会員の目線で、それに対するリターン、価値を提供する義務が僕にはあります。基本的に業界団体というのは、会費以上のメリットを求めるものではないとは思うのですが、リターンを欲している会員の感覚は分かります。だとすれば、それを追求していくべきだと考えています。
それから旅館業、業界団体として国家なり、観光業界に貢献をしていくという社会的な使命は必ずあります。一番は国の施策である観光立国に我々が果たす役割を明確にして、きっちり責任を果たし、むしろそれをリードするような形にしていく。それが回りまわって、例えばインバウンドが増えることによって各旅館の利益が増えることにもなっていく。社会的な使命を果たすと同時に、会員の利益にもつながるわけですから、観光立国は必ず協力をし、推進をし、それ以上の役割を果たしていくというのは必要だと思います。
こうあるべきだというのは皆分かっているのですが、それに対してどうやっていくのかが非常に重要です。その方法は、例えば会社だと全社員経営という形で方向性、ベクトルを合わせないといけません。業界団体も進む方向を明確にして、会員の皆さんのベクトルを合わせて突き進む。それが旅館業界のパワーにもなり、競合する他の国とのお客様を獲得する力にもなるわけです。