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戦略なき特区に疑義アリ(4) 外国人のみ対象に限定を

―危惧されることは多そうですね。

岡本 例えば海外の旅行会社が「部屋を全部買います」と言ってマンションの空室を抑える。それを1泊ずつ売って1週間滞在したことにする。そんな場合、誰がチェックできるんですか。もっと言えば、風俗に使われることも容易に想像がつく。

「安心安全な日本」に逆行

北原 一応、7泊以上泊まらず帰ることがないよう厚労省は留意事項としています。最初の契約の時点で7日間の金を払って契約を結ぶというふうにね。1泊だけしてあとの6日間はキャンセルするようなお客さんに対して受け付けられなくする―というようなことがきちっと明記されていなかったらあかん。

岡本 安全・安心の部分で言うと、1棟空いているマンションなんてまずない。隣に居住している人がどんな印象を受けるのか。

増田 神戸で300棟以上マンションを持っている会社の常務に、この特区のことを聞くと「ありがたいですわ。空き部屋を活用できますわ」って。空き部屋を活用できることが一人歩きをしてしまい、簡単にそれができると思っていました。

増田兵右衛門さん

増田 兵右衛門さん
兵庫県旅館ホテル生活衛生同業組合
副理事長(陵楓閣)

北原 その背景には不動産業界もいろんなビジネスモデルを考えて、既存のマンションをいかに活用していくかということでしょう。おそらく海外で流行っている「airbnb」「カウチサーフィン」という2大サイトの空き部屋を宿泊提供するというのがモデルになっていると思います。我々旅館にしたって、最近従業員が減ったから従業員寮が空いているし、客室ではともかく、このサイトに提供しようと、やるかもしれへん。

―今後の動きは。

岡本 特区構想で示された7―10日のいずれかをそれぞれの県や市が条例で決めることになります。条例案を出す以上は通したくなるでしょうね。ただ、保健所関係は嫌がっています。たぶん消防、警察に関してもよう面倒みません、責任を持ちきれませんという話になってくると思う。だから首長が認めるかどうかなんです。

北原 とにかくもう特区は作る、政令で内閣府で閣議決定したから、首長がゴタゴタ言うてもアカンとゴリ押しでくるのか、やっぱり地元の了解を得ないといかんという部分のせめぎ合いになると思います。

岡本 政府に対しては全旅連からもう1回、外国人のみに戻してくれとお願いしてもらおうと思っています。これは可能性がある。

北原 不動産業界も日本人がダメとなったら話が変わってくる。やっぱり日本人が大手を振ってウィークリーマンションを利用できるようにしたいのやから。

増田 今まで旅館業と賃貸は棲み分けをしてきました。ところが今の7泊から10泊という部分で議論していくと、安心安全のまちづくりや不法滞在のリスクという話になり、最大10泊までにしますと議論が反対側にくる可能性があります。2泊でも3泊でもOKになりかねない。だから本来的には、この案は廃案にしてもらい、都府県や市も条例づくりに参加しないことにならないとダメです。

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