僕らは宿やが好き-全旅連(3) 受信料、政権交代、震災-佐藤15代会長
―会長2期目に政権交代があり、政治運動も岐路に立ちました。
佐藤 正直、頭を痛めました。それまで政治活動といえば自民党の先生方への働きかけしかしたことがなかったからです。しかし、私たちの政治運動の目的は業界不利益の最小化や利益の最大化です。そのために政権与党との連携は欠かせない。運が良かったんですが、政権交代直後に、ある人の紹介で総理になる直前の鳩山由紀夫先生に会うことができ、民主党に観光議員連盟をつくることにご賛同いただきました。
根気強さと即断即決
―旅館業界の長年の要望だった固定資産税の見直しにつながりました。
佐藤 民主党政権下の2011年度税制改正大綱に、観光立国推進の観点から負担軽減の方向で固定資産税を見直す方針を盛り込んでいただきました。その後、再び政権交代があり、今度は自公政権下の「2014年度税制改正大綱」で、旅館ホテルの建物に係る固定資産評価の見直しを決めていただきました。
鉄筋鉄骨コンクリートと鉄筋コンクリートの旅館ホテルの経年減額年数が50年から45年に短縮されました。これにより年間の減税効果は旅館ホテル業界全体で56億円に及ぶと試算されています。
この評価替えは今年4月から適用されています。この春から減額幅の大きい施設では固定資産税が10%から20%は下がっているはずです。これは組合員のみなさんとともに運動した成果の表れです。
―時間がかかることもあれば、即断即決で話が進むこともあります。
佐藤 東日本大震災直後に30万人の避難民がいるのを見て、震災翌々日の3月13日に地元選出で当時の鹿野道彦農水相に電話で全国の旅館ホテルで被災者を受け入れたいと訴えました。3時間後に大畠章宏国交相(当時)から直接電話があって、この電話で旅館での被災者受け入れの方向性が決まりました。
その後は各県の旅館組合にたいへんな協力をいただき、結果として延べ525万人を受け入れることにつながりました。災害はその後も各地で発生しています。最近では政府の側から被災者の受け入れ要請がくるようになり、1泊3食付での受け入れも従来の5千円から7千円にアップされました。
―震災後、東京電力との間で、観光業の風評被害についての損害賠償をめぐり厳しい協議が続きました。
佐藤 福島、茨城、栃木、群馬の4県は当初から損害賠償の対象となりましたが、その他の県は風評被害による損害賠償が認められなかった。この間、全旅連は北海道から静岡まで風評被害があったことを東電に対して陳情してきましたが、指定エリアの拡大は進みませんでした。
それで、まず私の地元の山形県に集中し、県内全域を損害賠償の対象とする陳情をしました。さらに東北5県の理事長と協力した結果、12年10月に青森、秋田、岩手、宮城、山形の5県がまとめて対象エリアに追加されました。個々では無理でも、全旅連として声をあげ、行動したことが成果につながりました。