僕らは宿やが好き-全旅連(6) 耐震、訪日客、人材育成-北原次期会長
北原 耐震判定も第三者判定委員会によるものでないとダメという考えを変えてほしいですね。東京都では、構造計算ができる資格を持つ一級建築士なら耐震の判定ができます。その建築士が出した判定資料であれば融資の対象として認めるのです。それを全国でも適応できるよう全旅連、日本旅館協会が一致団結して進めていきたいと考えています。
労働環境改善でおもてなしの質上げる
―昨年、急増する訪日外国人観光客に対応する目的で賃貸住宅を宿にする特区構想が出ました。京都府旅館組合の理事長として直後から強く疑義を呈しておられました。
北原 2020年の東京オリンピックに向けて規制緩和がキーワードになっているんですね。政府は旅館業に参入しやすいよう特区を拡大していこうと考えておられるようですが、旅館業法の適用を除外するというのはちょっとやりすぎです。それをやると営業許可そのものの意味がなくなってしまいます。宿泊施設のうち、片方は旅館業法が適用された改善が求められ、もう一方は適用外というはおかしい。旅館業法の必要性を政府はどう考えておられるのか、見解がほしいですね。
―ただ、客室が足りないのは事実です。
北原 現在インバウンドが好調で東京、大阪、京都では客室が取れない状況が続いています。しかし、周辺地域の宿泊施設を含めると本当に客室が足りていないのかどうか、旅館の稼働率など基本データがないのでわかりません。日本ホテル協会などでは、専門業者を使って基礎データを把握しています。我々もしっかりと基礎データを把握し、数字的な裏付けを示して政府に話をしていく必要があるでしょう。
賃貸住宅が空いているから旅館に転換する話が出た時に、地域住民の理解がなければ許可できないという考えは当たり前のことです。賃貸住宅を旅館として活用するには新しい法整備が必要になると考えるのが正しい方向だと思います。そうでなければ宿泊施設の営業許可制度を全廃するのが筋ではないでしょうか。
―安易な対処療法的な面はあるかもしれませんね。
北原 日本のおもてなしが素晴らしいと今は評価されていますが、我々としてもその質が落ちないように絶えず従業員の教育とサービスの向上を心掛けていかなければなりません。おもてなしの質を上げるという意味で我々業界が一番悩んでいるのは、若い人たちの雇用が確保できていないことです。
雇用を確保するために労働環境の改善が必要でしょう。日本旅館協会は労務委員会を設けるそうですが、全旅連でも作り、就業規則を見直すことが必要です。払うべきものは払って、従業員に気持ちよく働いてもらえる体制をつくる。できることなら、客室係の若い人が結婚して子どもを生んでも働けるような子育て支援の施設を全旅連で協力して設けるなど、働きやすい職場づくりをしていかないと間違いなくおもてなしの質は落ちます。
せっかく日本へ来たのに期待を裏切られたインバウンドのお客様からジャパンバッシングを受ける可能性があることも十分注意していくべきでしょう。