地方創生の推進力―日本版DMO(2) 観光地域づくりの「司令塔」に
内閣府地方創生推進室まち・ひと・しごと創生本部の藤原威一郎参事官は、これまでの観光地域づくりの課題についてこう指摘した。「観光事業者がバラバラで、関係者の巻き込みが不十分」「経験と勘に基づいてやっており、客観的なデータの収集・分析が不十分」などとし、KPI(業績評価指標)やPDCAサイクルを明確化した科学的なマーケティングによる観光地域づくりの「司令塔=DMO」が必要だとした。
「住んでよし、訪れてよしの観光まちづくり」に
DMO推進機構の大社充代表理事は、現状の観光地が「分断」されていると指摘。「団体客が利用する100人入るレストランが象徴的です。地元の人はまず利用しない。逆に、値段が高いし美味しくないとも言います」「だけど、観光客は地域の暮らし、文化に触れる旅がしたい」とし「観光とまちづくりを『統合』しなければなりません」。日本版DMOによって「住んでよし、訪れてよしの観光まちづくり」に舵を切るべきだと呼びかけた。
欧米ではDMOが各地で活動している。米カリフォルニア州のビジット・ナパバレーは、同州では後発のDMOながら、この10年間で宿泊収入を大幅に増やすなどナパバレーの観光まちづくりをけん引している。クレイ・グレゴリーCEOは「2009年に40万ドルの予算で3人のスタッフしかいませんでした。そのため持続可能な財源を確保することが大切でした」。
そこで、TID(Tourism Improvement District=観光産業改善地区)として全宿泊者数に対し室料総収入の2%を課金、地域の宿泊施設に賛同を呼びかけた。地域のマーケティングやセールスをDMOが担うことや「投資して見返りがあること」を説き、現在では「650万ドルの予算で23人のスタッフ」を抱えるまでに至った。
ビジット・ナパバレーでは、平日の来訪を促すMICE誘致や滞在期間の延長を促すプログラム、イベントの充実を図り地域での観光消費額増を図る一方、地域の各世帯に絵ハガキを送るなどして「コミュニティの豊かさに寄与」しているという。