苦境に立つ旅行会社 県民割停止でキャンセル続出(1) 支援策乏しく事業継続も困難
オミクロン株による感染症の拡大が観光業界にまた暗い影をおとす。1月下旬に再開が予定されていたGo Toトラベルは延期され、昨秋から旅行需要をけん引していた“県民割”もほとんどの都道府県で停止してしまった。各地でまん延防止等重点措置が発令され、人流はぴたりと止まり、旅行会社、旅館ホテル、観光施設などにはキャンセルの連絡がひっきりなし。ただ、県民割のキャンセルの対応に関しては都道府県によってバラツキがあり、補償や支援に関しても業種により差異が生じている。特に苦境に陥っているのが旅行会社だ。
「もうやめませんか」観光・旅行=感染まん延
「ほんま、わややで。最初のうちは電話が鳴ったらドキってしてたけど、キャンセルの連絡が50件超えたあたりからぐらいから慣れてしまった。人間が変わったね、旅行屋じゃなくてキャンセル屋ですよ、はい。キャンセルの連絡、手続きだけで1日何時間もかかっているし、しかも一銭にもならない仕事」
もう悲壮感を通り越したあきらめの境地に達してしまった、関西で旅行業を営む社長は苦笑交じりに嘆いた。
その社長が言う。「旅館やホテル、飲食店は行政からの支援、補償があるからましだと思う。うちも雇用調整助成金や月次支援金はもらったけど、それではまったく追いつかない状況。何か抜本的に旅行業を支援してくれる政策がないと持たない」。
別の旅行会社経営者は「昨年秋にコロナが収まりつつあったので、ツアー募集の新聞広告を出した。県民割もあって集客状況は良かったが、“まん防”の発令で全キャンセル。行政の判断で“まん防”を出すのだから、無駄になった広告費用を補償するなど考えてほしい」と憤る。
また別の旅行会社の社長は「観光行政担当者に観光業界の悲惨な状況を訴えた。そうすると返ってきたのは『Go Toトラベルが始まったら旅行ブームで、これまで以上に儲けられるでしょ』と言われた。Go Toトラベルはいつ始まるかわからないから、ただ今の苦境を伝えているのに、この人は一体どこを見て観光行政やっているんだ」。
もう一人の経営者の心配は旅行業の登録更新だ。コロナ禍で基準資産額の救済措置が取られていたが、措置がいつまで続くのか不安を隠さない。「アフターコロナを見込んで前向きに作った借金もあるなかで、黒字でないと登録更新できないとなると、ほとんどの同業者は廃業を余儀なくされるのではないか。観光庁や登録行政庁は、中小旅行会社をなくそうと思っているのか」。
そして、中規模で営業している旅行会社社長は「旅館ホテルや貸切バスは、これ以上ないというほど感染対策を徹底している。満員の通勤電車の方がはるかに危ない。観光・旅行を感染まん延と結びつけるのは、もうやめませんか」。これは観光業の総意だと思うと言って代弁した。
(トラベルニュースat 22年2月10日号)
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