宿泊業界の成長戦略 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(1)
政権交代から約1年。観光は成長分野に位置づけられ、インバウンドでは3千万人という新しい目標値が設定された。一方、国内観光振興策では、観光庁は休日分散化を提案している。政府の方針を現場の宿泊業界はどのように受け止め、どのような取り組みで新たな成長を目指そうとしているのか。国際観光旅館連盟の佐藤義正会長に聞いた。
訪日客3千万人実現へ 国民の意識底上げ必要
―国観連会員の最近の営業状況はいかがでしょうか。
一部地域を除いて、おしなべて悪いと思います。東北の場合も今期4―7月を見ると前年を下回っています。夏休みに入ってからも東北四大祭の客足が景気の影響から落ちていますので、宿泊も連動してよくない状況です。ただ、最近は土日祝日の高速道路ETC1千円の効果が出て、遠方からのマイカーのお客様が増えています。こうしたお客様は予約せずに現地で宿泊先を探す傾向が見られますので、先行予約の状況はよくなくても、お盆期間などは、終わってみれば前年並みの結果を得られるものと期待しています。
―今期の第1四半期が前年割れということですが、昨年はこの時期に新型インフルエンザ騒動がありました。さらに下回っているんですか。
その通りです。
―大河ドラマの舞台の地域は好調との話も聞きますが。
大河ドラマの舞台のその一点だけという感じではないでしょうか。それ以外で言えば、奈良の遷都1300年効果で京都の宿泊が伸びているという話とか、イベントやドラマの舞台などの、非常に局地的な効果にとどまっているとの印象です。
―観光白書、レジャー白書からも宿泊需要の低迷は明らかです。どうすればいいでしょう。
時代の流れというものをしっかりと見据えて、新しい需要の創造に取り組むことでしょうね。お客様を一歩先んじてビジネスモデルを変えることでしょうね。
―妙案の1つとして観光庁が休日の分散化を打ち出していますが。評判がよくありません。
国観連会員へのアンケートでも半数ほどが反対です。産業界においても慎重論が多くを占めていますし、消費者である国民の皆さんへのアンケートでも反対が70%弱もあるということですから、拙速は禁物だと思います。
―インバウンドへの取り組みですが、観光庁は数値目標を引き上げた上で、達成年度を先延ばしました。3千万人を目指すという目標への期待と注文を教えてください。
まず、目標値についての行程表が出てきたことは高く評価しています。このことによって官民挙げて取り組むとの機運は高まりました。しかしこれだけの大目標を決めたのですから、関連業界だけではなく広く国民の皆さんに知ってもらい、国を挙げて取り組むとの姿勢をもっと強く打ち出すべきです。観光庁長官自らがトップセールスする姿勢は歓迎しています。我々が国に期待するのは、海外での日本観光のプロモーションです。ここにはしっかり予算を投入してほしい。もう1つは繰り返しになりますが、インバウンド振興の必要性についての国内向けの発信が必要です。我々、観光業界も含めて、外国から多くのお客様に来ていただくことの意味や経済効果についての理解が低いのではないでしょうか。国民全体の意識の底上げにも取り組んでほしいと思っています。
→宿泊業界の成長戦略 佐藤義正さん(国際観光旅館連盟会長)(2)に続く