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美味しいは当たり前 地域の特性と「人」の技

緊急事態宣言、時短営業も徐々に解け、次第に人の動きも出始めてきました。観光を我慢していた方々も少しずつ旅行へと目を向けてきてくれています。やっと動き始めたお客様をしっかりとつかむためにも、自身の旅館ホテルの魅力を最大級に出せるよう、従業員一人ひとりが尽力していかなければなりません。

このところ旅行会社がつくるパンフレットを見ても、料理はほとんど載っていません。近くの景色や客室の写真ばかりです。料理人としては寂しいものを感じますが、お客様が求められるものはもはや料理ではないのかもしれません。

先日、テレビで非常食の紹介をしていましたが、今や緊急時の非常食でさえ美味しいのですね。旅館やホテルに来て出される料理は、美味しいのは当たり前だという意識があるのかもしれません。だからこそ、「料理に求めるもの」「料理以外で求めるもの」を意識し、自身の旅館ホテルを改革していかなければいけないと思うのです。

料理以外で言えば、もちろん設備やアメニティ、そして何より「人員」ですね。普段からネットやメールにばかり頼って、コミュニケーションの取り方が分からなくなってはいけません。本を読み、知識を得て、仕事の中以外にでも自分の人格育成を図っていきましょう。「この人がいるから、このホテルに行ってみよう」「この人の料理が食べたい」と思ってもらえるようになるのが、一番の強みです。

観光業界は、どこも厳しい業績の中を耐えてきたでしょうから難しいと思いますが、従業員の士気を高めるためにも給与を上げていくことができればよいですね。昔は、料理人にも「指名料」があり、お客様から選ばれるとその分給与が上がるシステムがありました。こうしたシステムも復活させても良いのではないかと思います。

料理については、もはや美味しいのは当たり前です。美味しさ以外にどこで差をつけられるのか。それは技術と鮮度ではないでしょうか。生の魚は日常でも簡単に食べられることはできますが、そこに鮮度と技を乗せることによって、より価値が上がるのです…

(大田忠道=料理人集団「天地の会」代表)

(トラベルニュースat 2021年11月10日号)

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