リニューアル 働き場所を良くするために
少しずつ人が動き始め、観光地や温泉街にも活気が出てきました。日本中が良い意味でこの状況に慣れ、気をつけるべきところを理解しながらの生活にもゆとりが出てきたのかもしれません。
私自身も各地に呼ばれることが増え、様々な旅館ホテルの厨房や食事処を見て回らせていただいております。従業員の配置換えがあったり、館内をリニューアルしたり、これまでとは違う環境になったためアドバイスがほしいというところに出向かせていただいているのですが、いくつか共通して気になるところがありました。
一つ目は、閑散期に館内をリニューアルしているところが多いのですが、厨房を新しくしているところがまず見当たらないことです。露天風呂付客室を作ったり、部屋食をやめたり、従業員の配置を換えているところはたくさんありますが、厨房のつくりはまったく変わらずなので相談なく食事の対応を変えられたところなどは板前たちもかなり苦労しています。
次に、食事処をリニューアルしたところも多くありましたが、献立や料理の出し方、使用する機器などまで考えてリニューアルしていなかったため、間口の計算違い、動線の誤りなど、リニューアルし終わってからでは遅い発見が多くありました。ただ「広くしよう」「お客様同士が近づきにくいようにしよう」ぐらいの考えで作ってしまってはいけないのです。
また、ゆとりのある配置でリニューアルした食事処でも、以前と同じような料理の出し方をしていると失敗します。広い空間に素っ気なく置かれた料理は、味気なく感じます。話をすることを省いてばかりでも、サービスが足りないように感じさせてはお客様の満足感を得られません。
リニューアルした環境に合わせて変えていかなければいけないことはたくさんあるのですが、それをどこまで考えられているのでしょうか。
最後に、補助金などを使ってのリニューアルとはいえ、会社の予算も使っての改革であるにも関わらず、今後の売上目標などが明確になっているところがとても少ないことです。最低限、各部署のリーダーぐらいは月の目標などを見据えた上で動くべきではないかと思うのですが、売上目標すら決めていない旅館もあり、これでは従業員が一丸となって進んでいけないのではないかと感じました…
(大田忠道=料理人集団「天地の会」代表)
(トラベルニュースat 2022年7月10日号)
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