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料理の捉え方 一つひとつに言葉と物語

一年で一番美しい月が見えるといわれる「十五夜」が過ぎ、草木が色づく秋深さがお客様を呼び寄せる季節です。「行楽の秋」「趣味の秋」「食欲の秋」…皆様の「旅に出たい」という思いがより増していくこの時期は観光業界としても活気づく時期になります。

地域によって、お客様が期待されるものは様々だと思いますが、この数年でお客様の着眼点はどんどん変わっています。

料理を一番に感じていたころから、コロナ禍に入り客室やプライベート空間を重要視するようになりました。高額なお部屋にリフォームする旅館ホテルが各地に増え確かに売上も上げておりましたが、この数カ月はまた変わってきておりますね。

客室や管内設備を変えるのはとても費用もかかりますから、軽々しく手を出していくことはできません。決して料理が簡単というわけではありませんが、やはり自身の旅館に強みを持たせるために料理に特化していくというのは必要だと感じます。

料理といっても捉え方は様々です。味・質はもちろんですが、器や盛りつけの工夫、料理説明の仕方など、できることはたくさんあります。

先日お邪魔させていただいた群馬県の奈良屋では、和食懐石で提供する料理の一つひとつに物語のような説明が入り、使われる食材についてや、その土地の小噺など料理とともに楽しめる言葉がたくさん入って、お客様のリピート率が高くなったとのことです。

ただただ食材の原価を上げるだけでは得られないお客様満足を違う形できちんと捉えた良い一例です。

料理の説明を考えるということも手間の一つですが、この言葉に込めた思いをきちんと汲み取って、しっかりと覚え説明しようという使命感を従業員各自に持たせることも新しい仕事の一つだと感じる、そう料理長が言っておりました。確かにそうだと思います…

(大田忠道=料理人集団「天地の会」代表)

(トラベルニュースat 2023年10月10日号)

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