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客前料理 ソムリエのように接客する

「料理人」とひとことで言っても和食、洋食、パティシエなど様々な分野があります。ただ、今は和食の中にも洋食や中華を取り入れるなど、一括りにできなくなってきました。

しっかりと「懐石料理」を予想していたお客様からすると、予想外な料理が並ぶと驚かれることもあります。これも、何も説明せずに並べると悪い印象になってしまう場合もありますが、食材やこの料理にした経緯、料理人の思いなどをあわせて伝えると「そういうことで和食の中にこれが出てくるのか」と楽しんでいただけます。

料理ひとつ出すにも、ほんの少しの言葉でこうも印象が変わるのかと、こちらも驚かされます。これが「客前料理」の良さでもあるのですが、私の旅館に来た料理人は、ますはこの「客前」という課題に取り組まなければならないわけです。言われた料理を黙々と厨房で作っていればよいと思っていたのに、お客様の前に出て話さなければいけません。話すことが苦手な人からすると、初めはプレッシャーに感じているでしょう。まずは決められた言葉を暗記して話すことから始まるのですが、面白いことに、暗記して話せるようになると誰もがお客様の目の前の方が上手に話せるようになるのです。ただただ暗記して読み上げているよりも、お客様に実際にお話をすることでリアクションがあり、しっかりと会話ができるようになります。長年厨房の中で黙々と料理を作ってきた料理人は簡単にはいきませんが、これからの若い料理人は意外にもすぐに馴染んでいきます。そこに自分の仕事の面白さを見つけることもできています。

この「客前料理」を一つの強みとして、さらに知識を身につけ、料理だけでなくお酒などの知識も習得し、ソムリエのように接客できないだろうかと考えています。特に若い板前はコツコツと技を磨くための地道な作業に耐える力がまだまだ足りません。ただ、アルコールの種類を覚えたり、料理とお酒の相性などを説明することが好きな人は多いように感じます。好きなところを伸ばして仕事に取り入れ、知識の幅はどんどん増やしていくべきですね…

(大田忠道=料理人集団「天地の会」代表)

(トラベルニュースat 2024年3月10日号)

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