携帯電話の功罪 対人関係育成のために
今年も本当に暑い夏でした。活気ある季節ではありますが、全国の旅館ホテルは売り上げが伸びた大型旅館と、予約が伸び悩んだ小型旅館に二分されました。望まれる価格帯や施設・部屋設備なども徐々に移り変わっており、その旅館ホテルだけのせいではない部分もあるように思います。
もう少し前は小型施設の方が好まれていたのですから、設備管理や人事など現場もこの移り変わりに合わせていくのは大変かと思います。
大型旅館で忙しくなると一気に人手不足なりますが、わたしの知るところでも人事担当は営業活動に走り回り、しっかりと人材を確保していました。SNSが活発な今も、やはり「人を探す」には足で探し回るのが一番だということです。直接会って会話をしなければ、なかなか人を見つけることは難しいですね。
これだけ携帯電話(スマートフォン)で何でもできる世の中になると、便利な一方、人の成長を妨げる問題もたくさん出てきていると感じます。何でもすぐ変換してくれるから漢字を覚えない、文章を一から分かりやすく書けない、丁寧語や敬語を使いこなせない、対話自体が苦手になる…結果的に、人との距離感が分からず対人関係をうまく築けない人が増えました。私の旅館内でもよく感じることです。
昔は、職場で一緒に働いていくことによって、その人の言い回しや癖、普段よく話す内容なども把握し、すべてを言葉で伝えなくても何となく理解し動いていくことができるようになるものでしたが、今はまったく違います。してほしい仕事を一から十まで言葉にして説明し、それでもいざ出来上がりを見ると理解できていないことに気づきます。
携帯電話の良いところは活用していくべきでしょうが、家の中だけでなく、働く場所でも人間関係をうまく築いていくことができるよう人間関係の育成がとても重要です。従業員同士や上司と部下の間でも、しっかりとした業務連絡をメールやSNSばかりに頼るのではなく…
(大田忠道=料理人集団「天地の会」代表)
(トラベルニュースat 2024年9月10日号)
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