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130年前にタイムスリップ NIPPONIA田原本マルト醤油

最近増えてきているのが古民家を改修し、モダンなホテルに再生する事業だ。地域の原風景の中で時を刻んできた古民家を再生し地域の活性化を図ろう、というねらいもあり、全国各地で盛んに取り組まれている。

奈良県田原本町。田園風景が広がる日本の原風景がそこにはある。大和川周辺の肥沃な大地から収穫された原材料を元に醸造文化が広く根付いており、昔から醤油や味噌、酒などの醸造が行われていた。

そのうちの1つ、1869年創業の奈良最古の醤油蔵である「マルト醤油」が蔵や母屋、材料庫などを改修。昨年8月、古民家ホテル「NIPPONIA田原本 マルト醤油」を開業した。

築約130−140年という歴史を刻んだ古い建物は“大和棟”と呼ばれる奈良伝統建築様式を伝えており、ホテルに改修する際に、そうした建築様式を尊重。梁や柱をはじめ、欄間や小窓など内装の設えなどをできるだけいかし、現代の快適性を取り入れてホテル空間を創り上げた。

客室は7室。代々蔵元の当主の部屋であった母屋の2階にあるスイートルーム「木藤(KIFUJI)」は広さ約66平方メートル。和室3間で両側に開放部があり、田原本の原風景が手にとるように見える。たぶん代々当主も毎日ここから四季折々に変わる風景を眺めながら、仕事や家族、地域民のことなどを考えていたのではないだろうか。

また約300年の歴史を持つ蔵元ならではの客室が「府庫(FUKO)」だ。マルト醤油に関する古文書や文書、財物を保管していた蔵で、広さ約40平方メートル。メゾネットタイプで、2階の屋根裏部屋のようなベッドルームは子どもたちにも喜ばれそうだ。

こちらも家族連れに人気の客室が原材料庫を改修・改装した「碓(USU)」「糀(KOUJI)」「穣(MINORI)」「初瀬(HASE)」である。1階が原材料を保管し2階に醸造職人が寝泊まりしていたという。客室は広さ約42−64平方メートル、こちらも1階がリビングルーム、バスルーム、2階がベッドルームで、定員は3−5名。天窓を設け、自然光が差し込むようにし、太い梁をそのままいかし、梁を潜ってベッドに行かないといけない仕様や、2階から階下がのぞけるような構造など、当時の仕様を肌で感じられる非日常性を備えている…

(井村日登美=ホテルジャーナリスト)

(トラベルニュースat 2021年3月25日号)

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