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現代アートと職人技のコラボ すみや亀峰菴

つくづく宿創りはオーナーのセンスによるところが大きいと思った。そう実感させられたのが京都府亀岡市の老舗旅館「すみや亀峰菴」。随分前に一度訪れた時も、しっとりとしたいいお宿という印象だった。名前もしっかりと憶えていた。まさに心に残る宿の1軒である。

久しぶりに訪れると、昨年春にロビー&ギャラリー「百代(Hakutai)」、今春には“現代アートの中に泊まれる”としてアートルーム「呼風(こふう)」をオープン。これに以前から取り組んでいた左官職人や和紙、陶芸などの職人技が加わり、最先端の感性と歴史と伝統の長い時間の上に積み重なってきた感性がコラボレーションし、見事なまでに宿として昇華させていた。

一般的に現代アートといえば、あまりにくつろぎや快適から離れていて、どうも落ち着かない空間になってしまいがちだが、そこがアーティストや職人の感性の鋭さなのか、「馴染む」「落ち着く」空間を創り上げている。アーティストは世界的に活躍する現代美術家の柳幸典氏。職人たちは、「カリスマ左官」職人と言われている左官職人の久住章氏。世界各地の土塀を見て回り、独自の技を創り上げる。そして陶芸家の石井直人氏、和紙職人のハタノワタル氏という匠たちだ。

同館は1955年創業。家業が炭焼きだったことから館名に「すみや」を付けたと聞く。高度成長時代を迎え、団体旅行が主流になり、同館がある湯の花温泉も活況を帯びる。当時全国の温泉旅館がそうだったように団体客が増え、宴会場を整備し、客室数を増やしていく。その後の経済環境の悪化で、団体主導型では難しいと判断。競合他社の状況を鑑み路線を変更し、規模の縮小化を図っていく。

転機は2006年ごろから始まった。まずは料理に手を入れた。京都の料理屋レベルの料理を提供したいという思いから、稼働がめっきり減った宴会場やカラオケルームなどを撤廃し、跡地にダイニング「旬膳瑞禾(しゅんぜんずいか)」(55席)を整備。フロア中央に、京都の町家などにある台所「はしりもと」を再現し、おくどさんを配置した。

当時41室あった客室を28室に減らし、ライブラリー「徒然文庫」や茶室などを整備。客室は露天風呂付き客室を増やしていき、高級化を進めていった。心掛けたのは時の経過においても飽きないものを創り上げていくこと。17年前に改装したという温泉かけ流し露天風呂付き足湯付きの客室「穂波」は広さ約100平方メートル。小上がりに和風ベッド、リビング、和室という構成で、家族連れを中心に根強い人気を誇っている…

(井村日登美=ホテルジャーナリスト)

(トラベルニュースat 2022年10月25日号)

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