クイーンメリー2に乗る-老舗再生への事業戦略
老舗定期客船会社のキュナードが、クルーズの世界では失敗して、カジュアルクルーズの雄であるカーニバル傘下で再生できたのはなぜか。クルーズを研究する筆者にとってはたいへん興味のあるところです。
キュナードが最後に建造した大型定期客船「クイーンエリザベス2」は、建造途中でクルーズ仕様に設計変更されて1969年に完成しました。夏には伝統ある大西洋横断クルーズ、冬季には恒例の世界一周クルーズなどを行いました。クルーズ期間は2―3週間を中心として、世界一周では3カ月という長さで、クルーズ料金は1泊あたり3万円程度からの、いわゆるラグジュアリークラスの料金設定です。
同社はノルウェージャン・アメリカ・ラインの2万トンの客船「サガフィヨルド」、「ビスタフィヨルド」を購入し、さらに4千トンの高級ブティッククルーズ船「シー・ゴッデスⅠ」姉妹も購入します。さらにカリブ海では、1万7千トンの「キュナード・カウンテス」と「キュナード・プリンセス」でのクルーズも開始します。このように当時のキュナードのクルーズ戦略は一貫性がなく、いろいろなクルーズに手を出しては失敗するという悪循環に陥っていました。
そうした中でキュナードを引き取ったのが、カジュアルクルーズの雄であるカーニバルでした。カーニバルの総帥アリソン氏は事業規模の拡大にあたって、企業買収という手段をとりましたが、それぞれのブランドを残したまま、グループ全体でラグジュアリーからカジュアルまでのクルーズの品ぞろえをするという戦略をとりました。そのトップブランドに据えたのが老舗キュナードなのです…
(池田良穂=大阪経済法科大学客員教授)
(トラベルニュースat 2019年8月25日号)
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