科学的リスク思考のすすめ
新型コロナウイルス感染禍がなかなか収まらない。
この書き出しは1カ月前の本コラムとまったく同じフレーズだ。「外出自粛」「特定業種の営業自粛」「三密の回避」「接触の80%減」といった掛け声が続くが、感染禍からの解放の目途はつかない。収束までには2年はかかるといった論評まで出ている。そして経済的な打撃が現実味を帯びてきた。企業の倒産・廃業の増加だけでなく、個人的な視点に立てば、新卒者の内定取り消し、派遣切りが広がり、家庭内暴力といった社会問題までが取り沙汰されている。感染症の拡大防止と経済の失速防止さらに社会の安定性をいかに保つかが問われている。
地震や津波、そして噴火といった災害が多い日本にあっては、被災地以外の地域は、しっかりと経済を回して失速をさせず、被災地を外部から経済的に支えるという役割分担が重要だった。すなわち突然の自然大災害時には、日本全体で支え合い災害地の復旧・復興を強力に推し進めるシステムだ。
しかし、この機能が今回のウイルス禍では機能せず、日本全体が機能不全に陥っているように見える。本来は感染が深刻なところは強権を発してでも感染の抑え込みを行い、他のところは感染侵入させない対策を行いながら経済を回すことが必要だったのではないか。
行政は、みんなに分かりやすくするために「ワンフレーズ」を多用しているが、これが個々人の科学的思考を止めてしまい、錦の御旗のワンフレーズに反した人や事業へのバッシングを誘起している。
ここでは、やはり感染の根本に立ち戻って考えることが必要だ…
(池田良穂=大阪経済法科大学客員教授)
(トラベルニュースat 2020年5月10日号)
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