日本の遊覧船事業 コロナ禍で打撃も様々な工夫
「クルーズ客船に乗りたいですか」と聞いたアンケートに、日本人の約50%の人が「船酔いが嫌なので乗りたくない」と答えたといいます。すなわち日本人の約半分が、船酔いを恐れて船に拒否反応を示していることになります。
たしかに、「板子一枚下は地獄」ということわざもあり、船乗りが危険な職業であること、すなわち船は危険な乗り物であるという風評が日本では定着しています。
一方、有名な画家モネの舟遊びの絵や、日本の浮世絵にも舟で遊ぶ絵が残っており、昔から船に乗って楽しむ習慣が、世界各地に、そして日本にもありました。多くの池や湖には手漕ぎボートや遊覧船がありますし、屋形船と呼ばれるお座敷舟で航海しながら宴会を楽しむ風習も昔からあり、今でも結構な人気のようです。船を怖がってばかりいたのではなく、船や水を愛する気持ちは昔から日本にもあったのでしょう。ただし、これには「静かな水面」という条件がついていました。
では、国内にはどのくらいの遊覧船が運航されているのでしょうか。国交省の統計によれば、2019年の時点で遊覧船等の旅客不定期航路事業は、1252航路、1131隻、575事業者にのぼっています。また、この15年間ほど、旅客数は漸増しており、着実な成長傾向を示しています。利用客数は2019年度には940万人であり、最も減少した2011年の720万人をボトムにして増加に転じています。すなわち、インバウンドの観光客増に伴って観光事業である遊覧船事業も拡大しているのです。
今年の夏、北海道から東北、関東、甲信地方の湖の遊覧船を見て回わりました…
(池田良穂=大阪経済法科大学客員教授)
(トラベルニュースat 2021年10月10日号)
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