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大神島航路の新造船「ウカンかりゆす」 観光が公共交通の維持に貢献

沖縄県宮古島の観光がブームとなっています。沖縄本島から西に約300キロの東シナ海に浮かぶ、日本では珍しい船では行けない離島の1つで、唯一の公共交通機関は飛行機です。沖縄県内の那覇や石垣島だけでなく、大阪、東京、名古屋からの直行便もあり、令和3年度は約43万人が訪れています。中国からの大型クルーズ客船の寄港地としても脚光を浴びていましたが、新型コロナの影響でこの2年間入港船はありません。

宮古島の周辺には、池間島、伊良部島、下地島、来間島がありますが、いずれもサンゴ礁の上に建設された海上道路で結ばれています。美しいサンゴ礁の海を眺めながらの海上道路のドライブは爽快で、これが観光の1つの目玉となっています。

宮古島の周りで唯一、道路で結ばれていないのが大神島です。この島には宮古島の北部の島尻漁港から大神海運の小型客船が毎日4便運航されています。航海時間はわずか15分。ここに新しい船が登場したので、さっそく見に出かけました。

実は、数年前に大神海運は経営難に陥り、地元企業が共同出資して株式会社にして再建されたという経緯があります。それまでは公的な離島航路補助金はあったものの、過疎化の進む離島航路の維持は一民間企業では無理でした。今回新造された「ウカンかりゆす」は18総トンの可愛らしい客船で、アルミ製で16ノットのスピードが出ます。船名の「ウカン」は大神を意味する方言で、「かりゆす」はめでたいという意味だそう。船は宮古島市の所有で、運航を民間会社の大神海運が行う上下分離方式での経営形態となっています。

しかし、島民が21人という離島で、なぜ、民間での公共交通機関の運航が可能なのかは不思議です。それに答えてくれたのが学術雑誌沖縄地理第20号に掲載されていた堀本氏の論文です。

それによると大神島は典型的な限界集落と言えますが、航路が観光客によって維持されて消滅を免れているとのこと…

(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)

(トラベルニュースat 2022年5月10日号)

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