コロナ禍から復興するクルーズ
約2年半にわたる新型コロナの世界的流行によって打撃を受けた内外の観光業がようやく復活の時を迎えています。
2019年時点で全世界で年間3千万人が楽しみ、約17兆円の経済規模だったクルーズもこの春から世界各地で復活して順調に乗客を集めており、来年にはコロナ禍前の3千万人規模にまで回復して次なる成長過程にのるとの希望的な見方が大勢を占めつつあります。
20年からのコロナ禍の3年間に新造されたクルーズ客船は57隻で、その部屋数は約5万室、ベッド数で約11万床となります。この間、ゲンチン香港の倒産はありましたが、カーニバル、ロイヤル・カリビアン、ノルウェージャン・クルーズ、MSCの4大グループは健在で、カーニバルでは10隻、ロイヤル・カリビアン7隻、MSCは4隻の新造船をそれぞれの船隊に加えました。
クルーズ客船の多くは国際航路の航海を行いますので、コロナ禍で国境が閉ざされた結果、大半がアイドリング状態となり、各地の港や沖合で長い停船を強いられましたが、北米、欧州の順に国際クルーズが再開されました。ただし東アジアではゼロコロナ政策をとる中国をはじめとして、日本でもまだ国際クルーズは再開されていません。
しかしクルーズ船の強みは世界中どこにでも移動できることで、クルーズが再開された水域に移り稼働を始めています。アジア水域用に新造された船もアメリカや欧州でのクルーズに従事しながらアジア水域でのクルーズ再開を待っています。
19年にはクルーズ人口が35万人に達した日本においては4隻の日本籍船は国内クルーズの再開をしていますが大型の外国籍船の国際クルーズはまだ再開できていません。日本の旅行社が船をチャーターしてのクルーズも売り出していた今夏のクルーズは中止となり、早くても秋の再開となりそうで、最大手のプリンセスクルーズは再開を来年春にまで延ばしました…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2022年7月10日号)
- 急増する小型豪華客船(24/11/15)
- 日本一周クルーズと地方活性化(24/10/15)
- アイランドホッピング 東京―伊豆諸島―下田(24/09/11)
- アラスカクルーズ 観光公害を防ぐ人数制限の協定(24/07/12)
- 津軽海峡クルーズ(24/06/13)
- 寄港地潤すクルーズの経済効果(24/05/14)
- 現代クルーズ発祥地は今(24/04/15)