新造船「あおい」登場 ジャンボフェリー・神戸―小豆島―高松
かつて関西と四国の間にはたくさんのフェリーが走っていました。しかし、その多くは瀬戸大橋と明石海峡大橋の開通によって姿を消しました。風前の灯火となったものの見事によみがえった航路もあります。それがジャンボフェリーの神戸―高松航路です。
関西汽船と加藤汽船がジャンボフェリーの愛称で4隻のカーフェリーを投入していて、片道約4時間の航海時間でしたが、明石海峡大橋ができて高速バスだと3時間、自家用車だと2時間強の所要時間に短縮されました。この時点で関西汽船は事業から撤退、加藤汽船は航路を維持しましたが、経営状態は悪化していきました。
そこで、新生ジャンボフェリーによる再生を図ります。途中の小豆島に寄港して新たな需要を取り込むことにしましたが、これによって神戸―高松間の所要時間は4時間半になり、さらに30分あまりも長くなりました。所要時間で勝てないなら、料金で勝つしかありません。ここでニーズに合わせた弾力的な料金設定をします。
神戸―高松間の高速道路の料金は約9千円でETCを使っても5680円です。これに対抗すべくジャンボフェリーは4990円として、ネット価格では4740円としました。車で走ればさらにガソリン代もかかりますからかなりお得です。すなわち、関西―高松間の最安値の交通機関とするという戦略に出たのです。一方、小豆島は橋がかかっておらず、競合するのは他のフェリーとなるため料金を下げる必要はありません。このようなわけで遠い高松までの方が運賃が安いという、ちょっと不思議な料金体系になっています…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2022年12月10日号)
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