クルーズ旅行の特性
今年は、日本にも大型の外国クルーズ客船がたくさん寄港しました。その中には、日本マーケットで集客して日本発着のクルーズを行った外国クルーズ客船もたくさんあります。どの船も日本のマーケットの開拓に積極的ですが、海外マーケットでも集客して、飛行機で日本に来て、日本周辺のクルーズを楽しむインバウンド客も少なくありません。
クルーズの販売には、顧客に観光商品としてのクルーズ旅行の特性を知ってもらうことが必要だと言われています。クルーズが説得商品と呼ばれるゆえんです。
ほかの旅行商品との違いは、その料金体系にあり、移動だけでなく、宿泊、食事、喫茶、エンターテーメント、スポーツまで、旅行中に必要なほぼすべての費用を含んいる点にあり「オール・インクルーシィブ」という言葉で表現されています。この言葉は、最近、アルコール飲料まで含む場合の狭義の意味で使われることも多いですが、とにかく「込々(こみこみ)」の料金体系になっていることが特徴です。
2つめの特徴は、動くホテルとしての機能でしょう。乗船して自分の船室に入ると、旅行中ずっと同じ部屋に滞在します。乗船して着替用の服をクローゼット等に収納すると、下船まで荷物を作って運ぶ作業はありません。これはクルーズ以外の旅行では決して味わえないとても楽で快適な旅で、クルーズでよく用いられる「目覚めれば新しい街」というキャッチフレーズがその特性をよく表わしています。
クルーズ客船には、高級な船から一般大衆向きの船まで様々なタイプがあります。定期客船が姿を消した後、定期客船の最上級クラスのサービスを売りにするクルーズ客船が登場しますが、十分な需要が開拓できずに次第に規模が小さくなりました。
そうした中で1980年代に小さな需要に合わせた小型の高級クルーズ客船が登場してブティッククルーズ客船と呼ばれました。このトップマーケットは現在もラグジュアリ・マーケットとして健在で…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2023年11月10日号)
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