フライ&クルーズの時代
マイアミで生まれた現代クルーズが、巨大な観光産業に成長した理由の一つに飛行機との連携がありました。
かつて大西洋や太平洋には豪華客船とも呼ばれた大型定期船が就航していましたが、高速の飛行機との競争に敗れて姿を消しました。いわば客船の宿敵とも思われた航空機と手を結んだのが、新しい客船事業であるクルーズでした。速いが狭い航空機と、遅いが船上で楽しませることのできる船が、お互いの長所を活かしあって、新しいビジネスモデルを創生しました。それがフライ&クルーズでした。
両者を組み合わせることで、海から遠い地方の人々にもクルーズを短い期間で楽しんでもらうことができるようになり、マーケットは現役世代に拡大しました。また船会社としては、マイアミ周辺に限られていたマーケットを全米に広げることができました。各クルーズ会社は飛行機便もセットにしてクルーズを売り出すことで需要を急拡大することができました。
このモデルを日本のクルーズマーケットに最初に導入したのが「にっぽん丸」の「飛んでクルーズ北海道」や「飛んでクルーズ沖縄」です。ただ、季節的に行われる規模の小さいものでした。
来春、17万総トンの大型船MSCベリッシマが約3カ月にわたって沖縄発着のショートクルーズを展開することになりました。那覇発着で、台湾の基隆と石垣島や宮古島に寄港します。この沖縄発着クルーズを、クルーズ専門旅行会社クルーズプラネットが飛行機と組み合わせたフライ&クルーズ商品として販売しています。
このクルーズの魅力は寄港地にあります。基隆では、ジブリの「千と千尋の神隠し」の舞台のモデルとなったとも言われる山間の九份の街、そして基隆の夜市などが楽しめ、さらに沖縄先島の石垣島や宮古島の美しい海と文化を堪能できます。発着港である那覇での観光も魅力的です。
使用船のMSCベリッシマは、欧州船主の大型新鋭船で、船自体が目的地と称されるように船上にも楽しみが満載です…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2023年12月10日号)
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