オーバーナイト 寄港地周辺の観光消費が増大
クルーズ客船といえば、港に朝に入って、夕方には出港するというのが一般的なパターンです。しかし、最近の寄港パターンをみてみると、港で1泊するオーバーナイト船が増えています。特に、大阪港では急増しています。
筆者は長年、クルーズをみてきましたが、10年ほど前にイスタンブールに滞在した折、港でオーバーナイトする客船が多いことに気がつきました。これはイスタンブールの港から、少し遠い所にも有名観光地が多く、そこを訪れたいとの乗客のニーズが高いためなのだと聞きました。
大阪港の場合も同様のニーズが大きいようです。夜の大阪を楽しみたいニーズ、京都や奈良まで行ってゆっくりと観光したいニーズなどが高いためなのでしょう。陸上で宿泊する乗客もいるようです。
クルーズは、宿泊も、すべての食事も、エンターテインメントも込々の料金に特徴があり、寄港地での乗客の消費額が小さいと見られがちですが、実はそうでもありません。観光庁の調査によれば、クルーズ客が1日当たりに寄港地で消費する額は、飛行機で来日する観光客よりも40%近くも多いという結果がでています。オーバーナイト船では、さらに観光時間が伸びるので、夕食や夜間の飲食消費、陸上での宿泊需要も加わり、経済効果は格段に大きくなります。
しかも、これまでのクルーズのオプショナルツアーは、港から車で片道2時間以上の遠隔地に行くことは難しかったのですが、陸上で1泊できることで観光できる範囲は大きく広がります。それだけクルーズの地域への経済効果が波及する範囲も広がります。
今年の1―5月の間に大阪港へ寄港するクルーズ客船は39隻の予定ですが、このうち40%がオーバーナイトをします。さらに日帰り寄港ですが、夜10時以降に出港する船も20%にのぼります。これは近畿圏の観光の魅力が、クルーズ客の間に着実に浸透しつつある証でもあります。大阪港が、大阪だけでなく京都や奈良へのゲートウェイになっているのです…
(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)
(トラベルニュースat 2025年4月10日号)
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