「暮らすように泊まる」 分散型ホテルの可能性
那覇泊港から久米島行きの1日1便のフェリーに乗り、約2時間。沖縄県で一番人口の少ない村、渡名喜島(村)に着きます。周囲をサンゴ礁に囲まれた島では、小学校の運動会も水中運動会というのどかさ。島の中央に赤瓦の家々がふく木という広葉樹に囲まれ肩を寄せ合うように村落を作っています。
観光客はほとんど目につかない島ですが、砂地の路地は夜にはライトアップされ、1人乗りの電気自動車が島の足。なかなかおしゃれです。
そして、この島にはとても先進的な宿があります。民宿「赤瓦の宿ふくぎ屋」。名前を聞けばごくふつうの民宿に聞こえますが、実は複数の空き家をリノベーションし、1棟1室に見立てた「分散型ホテル」です。フロントを兼ねるのが「ふくぎ食堂」。島の人たちも食べにくる食堂兼居酒屋で、旅人も島人と一緒にごはんを食べます。
2018年6月の旅館業法改正で、旅館ホテルはフロントを有しなくてもよくなり、1室からでも営業できるようになりました。そのため、まちに分散する建物を客室として、まちぐるみで1軒の宿とみなす「分散型ホテル」が全国のあちこちで増えつつあります…
(井門隆夫=井門観光研究所代表取締役)
(トラベルニュースat 2018年10月25日号)
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