臨機応変、基礎力を養う 旅館勤務が学生を育てる
観光を大学で学びたいと言って多くの学生が観光関連学部・学科の門を叩いてくれます。「接客に憧れ」「ホテルのフロントに立つのが夢」「ディズニーが好き」。だいたいこういう理由が多いかと思います。
しかし、4年間観光を学び、卒業していく時には、そんな夢はどこかに飛び、「観光はいいかな」と言って他業界に就職していく学生が多いのも事実です。
ある一流外資系ホテルの人事マネージャーの言葉を忘れません。「大学の先生は何もわかってないんだから、余計なことはしなくていいんです。あとはこちらが育てます」。余計なことをするから、余計なことを教えるから観光が嫌になる。夢を見させたまま卒業させればいいんですと。
こうした茶番劇をいったい何十年やっているんでしょう。
その要因として感じるのは、大学生の幼稚化。素直でいい子が多いのですが、子どものまま育ってきています。大学2年生までは社会人基礎力はゼロに近い。どういうことかというと、叱られた経験がないので、失敗や叱られるおそれのあることを極度に避けるのです。常に予定された通りに線路の上を走ってきているので、臨機応変には弱く、予定変更を徹底して嫌います。報連相はやったことがありません。
それを修正するのが私のライフワーク。毎年夏、学生には旅館で3週間のインターンシップを経験させます…
(井門隆夫=井門観光研究所代表取締役)
(トラベルニュースat 2019年8月25日号)
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