「時代—立木義浩写真展」 心やさしきカメラマン60年の軌跡がここにある
誰だったか、大女優さんが日本を代表する二大カメラマンに連続してポートレートを撮られる仕事があったそうな。そのふたりとは片やスナップ写真の巨匠、木村伊兵衛と、片やドキュメンタリー写真の社会派、土門拳。女優さんはどちらがいいとか決して言わなかったが、その仕事ぶりの対照的なことに驚いたとのこと。木村さんはパッときてパッと撮って所要時間10分ほどでシャッター数もそれほど切らなかったという。しかし、土門さんの方は照明からアングルまで入念を極め、ほとんど一日がかりだったという。
僕は「撮り誇り」のような気持ちを感じる土門さんはまったくダメで、木村さんの方は写真全集を今も時々出して眺めているほどだ。
こういう写真家対決はたとえば、ポートレートに限れば、篠山紀信vs立木義浩にも言えるのではないか。どちらも人物を撮るのは一流だが、僕はあまり構えずに撮っている風に思える(これは僕の勝手な憶測、実際は違うかも)立木さんのファンだ。なんといっても、写真から滲み出てくる優しい感情がいい。このカメラマン、いい人だろうな、と思えるような「性格のいい」写真たちなのだ。
その立木さんの写真展が上野の森美術館で行われた。
1937年生まれというから、もう82歳。写真の仕事は21歳からというから、もう60年にわたるキャリアだ…
(松坂健=元跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授)
(トラベルニュースat 2019年6月25日号)
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