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講釈師、夕陽の中で喜ばれる 180度立場が変わるチャンス

12年ほど前の南青時代、某放送局の旅番組で兵庫県朝来市、雲海の竹田城跡を映像に収めようという仕事でした。当時は駆け出しで右も左も分かりません。撮影の開始から失敗の連続で、お昼ご飯も食べることができずに現場スタッフの雰囲気は最悪です。「この講談師使えない」という視線を浴びながら、ロケの最高潮、竹田城跡から僕が鎧兜(厚紙ですが)を身に纏った戦国武将になりきって夕陽を浴びながら締めのコメントの撮影―。

ところが、もっとも夕陽が綺麗に見える場所に一人のおじさんが座り…。「すみません。NHKの番組の撮影で少し場所を移動を願います」。「何でワシが退かなアカンねん! NHKがなんぼのもんやねん!」と、えらい剣幕で一向に動こうとしません。現場の空気は鉛のようになりました。ディレクターは「ロケの運びが下手くそなお前が時間押したせいやからな」。睨みつけられ僕は針のむしろです。

さらにそのおじさんは、鎧兜姿の僕の恰好を見て「大体な、このタレントの身に付けてるのは、大鎧と言うて、平安時代の鎧や。竹田城が存在してた時代には、もうこんなもん着てへんねん。NHKやったらそこらへんも勉強せい。ほんまに…あれ?ひょっとして?旭堂南青さん?」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2019年10月10日号)

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