講釈師が語る一休さんの八 将軍から屏風の虎退治を
自然と周建の才知の噂が立ちましかたら、遂には三代将軍、義満公の耳にまで入りましたので「うん、面白そうなやつじゃ、呼んで参れ」今度は義満の居る、鹿苑寺即ち金閣寺にへ、将軍の前に召し出された、像外和尚はもう、そわそわしております、下手なことをすれば、腹を切らされるかも知れません、が周建は澄ました顔です、ところへ将軍義満が上座へどっかと座りまして、
「その方が、才知に溢れておる、周建と申す者か?」「はい左様でございます」「年はいくつじゃ?」「はい、八つでございます」「うん、賢そうなものじゃ、今日は他でもない、あの屏風の虎を見よ。あれば度々、屏風から飛び出しては家来を喰らうてしまい、手に負えん。其の方の知恵であの虎を捕らえてくれんか?」「はい、容易いことです」「それなら、やってみぃ」「では、御家来の中で力自慢の方のお力をお貸し願いたい」「うう、これ蜷川出て参れ」それへズイっと進み出たのが、蜷川新左衛門。
「ははっ!では周建殿、手前がお手伝い致しましょう」「ありがとうございます。では早速此の虎を追い出してください、それから捕まえましょう!」「…え?いや…」「虎を追い出して下さいまし、そうすれば私が必ず捕まえしましょう」「…え?あの…」
蜷川新左衛門はどうしていいか分からずに戸惑っておりますと義満が
「新左衛門、もう下がれ」「…何しに出て来たんや。ははぁ!」「これはほんの小手調べ。時にお主は父の子か母の子か?」…
(旭堂南龍=講談師)
(トラベルニュースat 2020年10月10日号)
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