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講釈師が語る一休さん十二 世に二つとない茶碗か、命か

安国寺へ預けられた将軍家秘蔵の茶道具、世に二つとない石清水の茶碗を、寺の小坊主が誤って真っ二つに割ってしまう。皆が真っ青になっている所へ、周建が

「ではこれは私が割ったことにしましょう」「周建さんに罪を着せることはできません」「ならばこうしましょう」と真っ二つになった茶碗を目よりも高く差し上げて力任せに床へガチャーン! 今度は粉々になってしまいます。これがために小坊主は皆気を失ってしまいます。

「これこれ今、戻りましたぞ」「御師匠様、お帰りなさいませ」「おぉ周建か、他の者は?」「皆気を失っております」「妙な事を申す奴じゃ」「作麼生(そもさん)」「問答か? うん。説破(せっぱ)」「生あるものは?」「必ずや滅す」「形あるものは?」「必ずや砕けん」「恐れ入りました。ではこれを御覧ください」

ずいっと差し出したのが真っ二つに割れた石清水の茶碗︱「ずるいがな。砕けるって言うてしもうたがな? 怒られへんがな」。

どうすることもできずに正直に蜷川新左衛門を通じて将軍のお耳に伝えれば、満面朱を注ぐが如く、お怒りとなり、周建を引き出され「天下に二つとない茶碗を粉々に割るとは不届き者め。手打ちに致す! さりながら今際の際、何か言い残すことはないか」「御座います」「申してみよ」。

「『高砂の 尾上の松も 枯るるなり 土でつくねた 茶碗大事か』歌に詠まれる高砂の松や尾上の松もいつかは必ず枯れてしまいます。今は天下泰平にして万民安穏といえども、万一国乱れて戦になった折、茶道具で民を守ることができましょうか?…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2021年3月10日号)

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