講釈師が語る一休さんの十八 華叟和尚、徹底的に鍛える
堅田は禅興庵(現在の祥瑞寺)の華叟和尚に弟子入りをしようとするが、前払いをされる宗純。確固たる決意で以って、其の日から門の前で座禅を組んで、夜になると寺の軒下で寝ました。
四、五日経ったある朝、華叟和尚が弟子を連れて、村の檀家の元へ行く為に、寺から出てくると、宗純は座禅をしておりましたから、ジロリ睨みつけた華叟は弟子に向かって
「まだおるのか?水を掛けろ」「はい」。弟子も仕方がありません。桶に水を汲んでバシャと浴びせかけると全身ずぶ濡れになりましたが、少しもひるまずに、屹然として座禅しております。「この寒い気候じゃ、これで腹を立てて帰るだろう」と思い、華叟和尚が出かけて行く。
その日の夕方に帰って来た華叟が、其処へ依然として座っている宗純の姿を見て驚いた。
「この男、存外ものになるかも知れぬ」と内心改めて
「これ顔を上げよ。どこの寺から来たのじゃ」「都は西今寺の謙翁和尚の許から参りました」「謙翁和尚に学ばれたのか。謙翁和尚は、妙心寺の無因禅師の弟子、その妙心寺は大徳寺を開かれた大燈国師の師匠、大応国師の弟子である、関山和尚によって始められておる、つまりは大応国師の禅を受け継いでいる者同士。その方、名は何と言う」「宗純と申します」「寺の中に入れ」「ありがとうございます」
禅興庵での暮らしは、西今寺よりも更に厳しいものでした。食べ物もありませんし、何より、華叟和尚が誰に対しても厳しく接します。寺の収入になる売る為の薬草を刻んでおりますと、宗純が刃物で刻んでありましたが…
(旭堂南龍=講談師)
(トラベルニュースat 2021年10月10日号)
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