楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

講釈師が語る一休さんの十九 琵琶法師の調べで公案を悟る

宗純は禅興庵に修行する事になって、夢の間に三年という月日が流れます。ある日華叟和尚から公案を出されました。公案とは禅宗に特有の物で、試験問題とも言うべき物。公案の名は「洞山三頓(とうざんさんとん)」。

唐の禅僧で洞山という者が諸国を行脚して挙げ句、遥々、韶州(しょうしゅう)の雲門寺(うんもんじ)へやって来て、住職の雲門に参じた時の事

「お前はどこから来たのか」「査渡から来ました」「して、この夏はどこで暮らしておったのか」「湖南の報慈寺で暮らしておりました」「ほう。そこを何時出立したのじゃ」「確か八月二十五日でした」

この時に雲門は大喝して「このたわけ者めが!打って打って打って打ちのめしてやりたいが、棒が穢れるだけであるからやめておく」。

三頓とは一頓が二十棒の事で、六十棒つまり、雲門は洞山に対して、『徹底的に打ちのめして懲らしめてやりたい』と仄めかしたのである。

その夜、洞山は何故叱られたのか考え抜いた。しかしどうしても分からない。夜の明けるのを待ってもう一度、雲門のところへ行って「昨日は酷くお叱りを受けましたが、私は打たれるだけの、過ちがあるとは思えません、なんの過ちがあるのか、教えて頂きたい」。

すると雲門は怖い顔をして「この穀潰しめ!あっちへうろうろ、こっちへうろうろ、そんな上の空で、お堂をうろついていたのか、まだ足元にも気がつかんのか?」と叱りつけた事で、洞山は大悟したという。何故、洞山は悟りを開いたのか、応えよ。

斯様な公案であった。しかし、宗純は何度も何度も読むが、洞山が悟りを開いたのが分らなかった、途方に暮れた宗純はふらりと、禅興庵を出ると、あてもなく歩き始める…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2021年11月10日号)

続きをご覧になりたい方は本紙をご購読ください
この記事をシェアする
購読申し込み
今読まれているニュース
地旅
今すぐにでも出たくなる旅 最新
未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・愛媛編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・高知編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

未来へつなぐ四国「おもてなし」の魂・徳島編

「四国はひとつ」の旗頭のもとに4県がひとつになって観光振興を進める四国。その根幹は、四国八...

トラベルニュース社の出版物
トラベルニュースat

観光・旅行業界の今に迫る面白くてときどき役に立つ専門紙。月2回発行

大阪案内所要覧

旅行業務必携。大阪にある全国の出先案内所収録。19年版発売中!

旅行業者さく引

セールス必携。近畿エリア全登録旅行業者を掲載。22年版発売中!

夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ