講釈師が語る一休さんの二十三 守山の古刹に「雷井戸」が残る
守山へ差し掛かった一休禅師、土地の者に話を聞けば、どうやら鬼のような形相の雷様が、度々雷を落として皆を困らせている話を聞き、これを戒めようと致しましたが、聞く耳を持ちません。一休禅師が「ならば致し方がない」と素早く腰にブラ下げた酒の入った瓢箪、口をきゅっとひねって置いて「ざっ」とその酒を浴びせ掛ければ鬼の様な雷様が「ぎゃぁ」と叫ぶと雲からどすんと落ちてしまい、太鼓と撥を手から離しのたうち回っております。
「さぁお百姓衆、今のうちじゃ先ずはこの太鼓と撥を井戸に放り込んでしまいなさい」「へぇ偉いお坊様や。わかりました」と答えながら太鼓と撥を井戸にバシャンと放り込んでしまい、其れが為に力を失ってしまった鬼の様な雷を縄で括り付けてしまいます。
「いや、これエライお坊様や。此の鬼の様な雷様に一体何をしましたんや」「この瓢箪をみよ」「あ、清酒鬼ころし」「左様じゃ」「ありがとうございます。これで安泰で御座います、失礼ながらお坊様の御名前は」「ワシは一休である」「あぁあの、生き仏と称された一休禅師。へぇへぇ」「まぁまぁそれぐらいにして、これ雷よ、今後この辺りで悪さをしてはならんぞ」「へぇ一休様、悪さしまへん。ご勘弁願いとう存じます」。以来守山では雷が落ちることは無くなったという。
このような逸話を、現在の滋賀県は守山、少林寺という寺で聴かせて頂きました。そこは京田辺一休寺に安置されています一休禅師の木造座像と同じ物がある所縁のある所で、住職に話を聞きながら案内をされたのが、雷の力を封じ込めた雷井戸…
(旭堂南龍=講談師)
(トラベルニュースat 2022年4月10日号)
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