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講釈師が語る一休さんの三十 禅師の引導に蓮如上人ニコリ

ところがこの噂を聞いた町の者が「おい」「聞いたか?」「聞いたがな、何でも念仏唱えながら一休禅師に着いて行ったら、銭一貫貰えるねやて」「ほんまかいな?ワイは日蓮宗やで」「ええがな」「俺は曹洞宗や」「かまへんねん」「ウチらはPLや」「時代が違うがな」「そやけど、これだけ人居ったら、御家来衆も顔をいちいち覚えてへんやろう。」「考えたらそうやな」「もう一遍ぐるっと回って銭一貫貰いに行ったらアカンやろうか?」「お前、何と言うことを!」「やっぱりあかんか?」「行ったらええ。実はわし、もう三遍行ったんや」「上には上があるな」

図々しい者もあったもんで。と皆がゾロゾロ集まって参りまして、桃井の家来も呆れておりますが、約束ですからから銭一貫ずつ手渡して行きます。後で調べてみると山の様に積んでおいた銭がすっかりなくなってしまい。勘定をすると718人分持って行かれておりました。

桃井の館においては立派な座敷へ案内をされますと、本願寺の蓮如上人はじめ、名だたる僧侶がずら~と居並んでいる。蓮如と一休は眼で挨拶を致しますが、一休は威儀を正して「時に御家来、若狭之介の御子息はおられるかな。呼んで貰いたい。ワシは御子息の前で引導を渡したいから」「忝のう御座います。今暫くお待ちを」やがて、桃井若狭之介の倅、愛之助当年19才。

「今日は誠に有難き幸せ。厚く御礼申し上げます」「よく聞いておくように、引導を渡すから」

念仏を唱えながら、正面に据えてある棺桶の前に進み出で声高らかに
「『大名も 乞食も 同じ月は月 地水火風の うつけ者め等 』喝!」
「『引導は 無事なる内に あげたまえ 末期の旅に 赴かぬうち』喝!」
と之を聞いて居た家来はじめ、名だたる僧侶は「何と言う引導を、相も変わらず一休禅師は」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2022年12月10日号)

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