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講釈師が語る円山応挙その四 太夫に石塔建て、唐錦を手に…

「いやいや、そうやない。ちょっと気になることがおましてな。小さな行燈部屋。そこに病人が一人」「お客様でございました。まぁ良いことをして下さいました。紫さんも本当に喜んでおりました。それが可哀想にあの子は夕べ息を引き取ったんでございます」「え?亡くなった?御女中それはいつ頃の話じゃ」「はい、確か。八つか九つ頃だったと」「八つか九つ。さては夕べ。ワシの枕元に来たのは紫だったのか」「きっと全盛の頃の姿となって、このワシに別れを告げに来たのに相違ない。ワシが今日ここへ足を向けたのも紫の魂が呼んだに違いない。それで弔いの方は」「弔いなんかするような主ではございませんので。もうこの主人はひどいもんで、紫さんが全盛の頃は、散々儲けさせてもろうて、病に罹ると、早う死ね。早う死んでしまえの一点張り。病人を死に追いやったようなものですよ。そうですから、死んだがもっけの幸いと。店の若い者二、三人に言いつけて四斗樽の中へ入れて亡骸を出したんです。投げ込み同様でね」「可哀想に。すると何か?その四斗樽が棺桶に」「いいえ?その樽はそのまま持ち帰って漬物用に」「まぁ何ということをする親父やないか。それでお寺の方は…」

教わった足で寺へと参りました。なるほど花一本、線香一本手向けていない。土饅頭。これでは仏も浮かばれまいと住職に訳を話し、お供えした上でお経をあげてもらい、しかも石屋に頼んで小さな石塔まで建ててやりました。行きずりの者にこれだけの親切はなかなかできるものではございません…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2024年10月10日号)

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