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講釈師が語る円山応挙その八 幽霊の全盛期?綺麗な女子画

「へぇおおきに。これもなぁ。皆先生のお蔭やと思うて。喜んでおりますねん。あの掛け軸の画。掛けた途端、お客さんがどんどんと来てくれはりましてなぁ。店も新しいなって、ご贔屓からそれやったら屋号も新しくしようか言うて、海老芋と棒鱈の文字をとって『いもぼう』になりましたんや」

「ほう。それまた結構なことやな。ところでな。今日ワシが寄ったんは他でもない。あの掛け軸の画の続きを描いて来たんでな。まぁ店が運良く繁昌してたらと思うて持って来たんや」

「ええ?あの画の続きもんでやすかいな?講談みたいに」「そんなええもんやない」「ほたらなんでやすか? 前が幽霊の画やよってに。今度は墓場にしゃれこうべ」

「そんな嫌なもんばっかり描くかいな。今度はこれや。さぁご覧の通り」「まぁ、綺麗な女子はん。先生、これ花魁やおまへんか?」「そうや。ちょっと見ると分からんが、これがあの床の間に掛かってある掛け軸の幽霊、というよりも、幽霊みたいな女子、全盛の時はこんな綺麗な姿形してたんや」

「へぇ。そういうと成程、目も口もよう似てますな。こればあさんや。ちょっとこっちへ来い。それからなぁ。あれを早う持っておいで。先生怒らんといてくんなはれや。実はな。先生にお礼をしようと思うたんやけども、先生お金は受け取りはらへんよってに。こんなもんを支度させてもろいました」「何やこれ?」「唐錦の陣羽織でやす昔から家にあるもんで、大事に取って置いたんでやす。実はこの陣羽織の表から見たら分りまへんけどもな、裏の方がどう言う訳かちょっと破れてますねん。そやけど別の布を当てがいまして。そやけど着たら分かりまへんさかいな、先生が似合うやろうと思うて差し上げます」「裏が?破れている。唐錦の陣羽織、ちょっと見せてもらおうで」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2025年4月10日号)

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