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同調圧力を乗り越えて地域創造

Go Toトラベルキャンペーンも徐々に浸透し、都市近郊の比較的高単価の宿や客室の好調が続いています。キャンペーンは2021年1月で終了予定ですが、その後も継続せざるを得ないと思います。なぜなら冬のボーナスから賃金低下が目に見える形で生活者を直撃し始めるためです。実質賃金が下がった翌年の旅行実施率は確実に下がります。そのため、21年は観光産業にとって正念場となり、このままでは廃業の嵐となってしまいます。

Go Toイートのように定額制のほうがよいかもしれません。そうしないと高単価偏重が解消されないためです。実際、この夏も地方の小さな温泉地などはキャンペーンの恩恵にはあずかれていません。自治体の振興券で県内需要を掘り起こすのが精いっぱい。地方の温泉地や観光地の今後の廃業増加を回避するために、どう資金を注入し地方の雇用を守り人口を還流していくかが試されるようになると思います。

この夏、かつて30軒も旅館があったものの2軒に減ってしまった温泉地に一人残る後継者の若女将を応援しようと学生たちが小さなイベントを実践しに温泉を訪ねました。しかし待っていたのは、自治会アンケートによる反対多数。高齢者の多い町に若者が来ることはリスクだと思われました。スーパーナノツーリズムと銘打ち、ご近所さんが温泉に集まり、賑わいを復活させようと夜店企画を考えていましたが、町の行事はすべて中止、共同湯も外来おことわりとなる中で、企画は無謀に思われたのです。しかし、これがあと1年も続けば、温泉地の宿の灯はすべて消えてしまう…

(井門隆夫=高崎経済大学地域政策学部観光政策学科教授)

(トラベルニュースat 2020年9月25日号)

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