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宿泊業を非常時のシェルターに

200年前、産業革命が起き、石油が発見され、経済成長を前提とする資本主義が続いてきました。乱暴に言ってしまうと、資本主義とは物質的豊かさをエサに誰かから労働力や環境を収奪し、差益で経済をまわすという仕組みでした。

第三世界の労働力や資源を使い資本家が儲けて、そのおこぼれを第三世界にも還元し経済を成長させてきました。リゾート観光というのも資本主義世界の典型です。そして第三世界が豊かになり格差がなくなると、今度は正規雇用と非正規雇用の間に格差を作って差益を生むようになり、その格差もなくなると、能力を持つ人と持たない人で格差を作るという格差の再生産をし続けるのが資本主義です。すなわち、地球上の全人類が平等になった瞬間、資本主義は終わります。

そこに至るまでには100年くらいかかるかもしれませんが、資本主義は確実に終わりに向かっています。なぜなら、経済成長は人類の増加が前提だったからです。人口が増加し、収益を増やしても、ほぼすべてを1%の資本家が収奪しているとわかってしまった今、99%の人類は自分たちの幸せを守るために一人あたりの収益を守る作戦に出ました。それが人口減少です。そして今後は、生きていく上で必要な一人あたりの環境資源も守る作戦に出始めています。化石燃料、電気、水、食糧などの資源が途絶えたとしても生きられる生活空間をいかに造るかを考えることが世界の潮流となり、脱炭素や再生エネルギーの動きが活発になっています。

私は今後の宿泊業とは、すべての資源供給が途絶えても人々が生き延びていくためのシェルターとなるべきだと思います…

(井門隆夫=高崎経済大学地域政策学部観光政策学科教授)

(トラベルニュースat 2021年4月25日号)

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