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“生産者育成”は社会が担う

消費者の立場から生産者の立場へ。大学在学中の視点転換を学生の目標にしています。入学時には消費者の立場しか知らない学生が、卒業時に多少でも生産者の目線を持って社会に出てほしいという願いです。しかし、生産者の立場への気づきは難しく、消費者のまま卒業する学生が増え続けています。

生産者の立場はアルバイトで知っていますと学生は主張しますが、アルバイト先企業の目標は? 社会におけるミッションは何ですかと問えば、まだ答えられません。

地域に観光客を呼び込むには何をしたらよいという問いかけに「安くする」だけは考えないようにと言い続けていても、「割引する」しか思いつきません。それならばバイト先でも割引をしてくれたら大量に送客するのですかと問えば「それはやめてください」と返ってきます。時給で働く消費者脳のアルバイトにとってお客様は少ないほうがいいのです。それなのになぜ、観光地には割引を求めるのでしょうか。それは消費者の立場しか持たないためです。

セントラルフロリダ大学の原忠之先生に「大学のお客様は誰か」と聞いてみるとよいと教わりました。米国の学生は「社会」と答えるそうですが、日本ではほとんどが「自分」。こう答える学生は年々増えており、毎年質問しても同じ答えをします。どう考えても社会をイメージできないのです。学生は商品であり、大学は自己投資の場ということを米国の学生は理解して学んでいます。日本の学生は、大学は学位を買うための消費の場であり、いかに楽に卒業できるかがよい大学で、大学もそれに迎合しつつあります。お客様は自分と答える学生が社会に出ても、給与をいかに楽してもらうかしか頭にないはずです…

(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)

(トラベルニュースat 2022年9月25日号)

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