古い結婚観は日本を滅ぼす
人手がなくて、があいさつのようになりました。これは観光産業に限ったことはなく、いずこも同じ。
しかし、これはあたりまえです。現在70代の団塊世代の出生数は年間270万人、今年50歳の団塊ジュニア世代で210万人でした。それが、今年の20歳は112万人と50歳の半数しかいないのです。昨年生まれた1歳児は80万人を割りました。人口政策に手を付けない日本はいずれ消滅するという本まであります。
それで焦って悪評高い技能実習制度をやめ、家族も帯同できる特定技能2号を拡充しようとしていますが、外国人も経済発展しない日本より自国を選ぶようになりつつあります。外国人労働者を労働者ではなく家族として迎えられるかどうかまさに正念場なのですが、日本人の意識の低さには驚くばかりです。せめて観光産業だけは、温かく迎え入れてほしいと願っています。
政府も少子化対策と称して児童手当などの給付中心の政策を進めていますが、表面的と言わざるを得ません。夫婦の完結出生児数、つまり1夫婦あたりの子どもの数は50年間大きく減っていないことは従前から言われていることです。
問題は、都市化と未婚化です。都市化により都市では幼児人口の減少にかかわらず保育施設が足りません。そして上昇する一方なのが未婚率です。問題はここにあるのにまったく手が付けられていません。晩婚化は世界中で同じですが、日本の未婚率の上昇は特筆ものです。
日本と同じく人口減少しやすい男子直系家族のドイツは専門人材移民で乗り越えています。韓国は同棲でも家族とみなすよう法制度を見直し始めています。
日本人は、なぜ結婚しないのか。それは経済的・精神的な負担が大きいからです…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2023年5月25日号)
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