“蛙化現象”生まない場づくりを
23年上半期の高校生バスワード1位が「蛙化(かえるか)現象」でした。片思いだった彼が自分に振り向いてくれた途端、気持ち悪くなってリセットしてしまうという現象で、Z世代ならこの言葉を知らない人はいません。語源となった童話カエルの王子様は、カエルだと思ったのが実は王子様だったという話なので、その逆の意味で王子様だと思っていたら実はカエルだったという心理です。
これは日本に外国資本が入り、日本の収益がすべて海外に持ち出され、長期デフレに入った93年以後に生まれ育ったZ世代ならではの心理です。それ以後、家族は共働きとなり、親は子どもとのつながりが少なくなった分、関係は濃くなって友だち親子化していきます。仲間とはSNSで濃い友人とだけつながり、実は社会とのリアルなつながりが失われていったことがこの現象の背景にあります。
私の周囲にも蛙化する学生が多くいます。自分でも不思議のようで、あれだけ好きだったのに一気に嫌いになるのですが、嫌われたほうはわけがわからず、傷つき、女子への嫌悪感にもつながっていきます。おそらく、恋愛もゲーム化しているのでしょう。ゲットできたら終わり。それまで楽しめればよいのです。
日本の未婚率が上がっています。恋愛もマッチングアプリでの出会いに依存していくこともリアル社会での恋愛やつながり欠如が原因。コンプライアンスという言葉で自らを縛り、ハラスメントを起こせば懲罰といった職場での恋愛はとても面倒で「推し活」しているのが一番楽しい時代です…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2023年8月25日号)
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