逆三角形人口ピラミッド時代
全国旅行割の喧騒も一部を除いて終了し、落ち着きを取り戻したのではないでしょうか。地方宿泊業にとってはこれからが本番です。コロナ禍においてキャッシュを確保できた後継者のない宿は、円滑な廃業と売却やM&Aを進め、そうした勇断を地域全体で支えていく時代になっていきます。
思えば、旅館業軒数の最多は1980年。労働生産性のピークは93年でした。70年代から続いた一時代の転換期がやってきています。今年、最多人口が74歳から50歳にシフトし、人口ピラミッドの世代交代も起きました。2040年には、最多人口が永遠に70代以上に固定される完全逆三角形人口ピラミッドが世界で初めて誕生します。
人手が足りないと言われていますが、それは今後当然常態化するので、人手に依存しない事業モデルの構築が急がれます。そのため、1社が複数の業態の違う宿を経営・運営し、DXをフル活用する2020年代が始まっています。あるいは、家族だけで運営する宿も生き延びていきます。背伸びをしない経営も再評価されるようになるでしょう。ただし、もう現金払いなどはやめることです。すべて事前決済で、余計な手間とストレスを省くことが最低条件です。
逆三角形時代になった時、1人の上司に複数の部下という組織は成り立ちません。なぜ、星野リゾートや自遊人がフラットな組織を目指しているのか。ある程度の離職を見込みつつも、最低賃金や初任給を上げているのか。逆三角形時代は、転職・独立が当たり前の時代です。いかに短期間でノウハウを学び、転職や起業・第三者承継で自立していくか。これが今の若い人たちの考え方です。
1人の若い上司に複数の高齢の部下という組織も許容しなくてはいけなくなります。今、頑張っているネパールやバングラデシュの外国人の方々も…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2023年10月25日号)
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