“考えない”が観光業にしわ寄せ
星野リゾートが2024年10月から、大学生1年生から採用内定を出す方向で制度を変えました。就活の前倒しをするのかというネガティブな反応が多いかもしれない一面、合理的な方法です。というのも、大学2年生(19歳)の時点で能力や成績がほぼ固定される傾向があるからです。優秀で社会性のある学生にその時点で内定を出しておけば、多少他企業の就活もするでしょうけれど、1年も就活で無駄にするなら、残りの大学生活を充実させようと考えると思うからです。ただし、先々を読めるそうした学生はごく一部。周囲に同調しないと不安な多くの学生は、行きたい企業もないのに何となく就活を始めます。やっかいなのは、実はこうした学生のほうなのです。
初任給25万円、テレワークができる企業に限る、なんていうのは当たり前。彼氏についていく、推しのいる地域に住みたい、と軸がずれてしまうことも普通にあります。一番多いのは、何をしたらよいのかわからないという学生です。とりあえず知っている会社に応募するので、お菓子メーカーさんなどはそんな学生をさばくのが大変だろうなあと思います。
星野リゾートが採りたいのは「考えることのできる学生」なのだと思います。それだけ、自分で考えない学生が年々増えています。それは日本人全体に言えることだと思います。
人口減少と気候変動。この地球の二大危機をここまで無視できるのも日本人のすごい特性だと思います。日々の異常気象はもちろん、日本の海は磯焼けで海産物はすでに採れなくなり、100年後には雪も降らなくなっていることを考えているでしょうか。東アジアでは、20年後には若者は今の半数まで落ち込み、大学がなくなるのはもちろん、徴兵制を復活させなくては国の防衛もできず、その理由づけで紛争が勃発するでしょう。戦争して儲けたい政治家は徹底して少子化を進めるために明治時代の家族制度に固執しています…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2024年10月25日号)
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