万博の年に思う子育てと観光
新年おめでとうございます。
今年は大阪万博の年。「人類の進歩と調和」をテーマとした1970年の万博は日本が経済成長を達成した記念碑として歴史に刻まれました。そして、55年。今度の大阪万博は、この間に変化した日本の経済成長がリセットされ、経済定常化をスタートさせた記念碑として2025年を歴史に刻んでほしいと願っています。
思えばこの55年は最多人口の団塊の世代の活躍した半世紀でした。ニクソンショックによる変動相場制の開始と急激な円高、国債の膨張へと向かった55年間。1千兆円を超える国の借金はそっくりそのまま国民の貯蓄に収まりました。この貯蓄はいずれ相続という形で下の世代へと受け継がれます。
しかし相続で金融資産が下の世代に渡ったとしてもその世代もすでに60代。また貯蓄を始めるのでしょうか。その子ども世代はお金がなく、消費も結婚もできずとも子へも孫へも渡すことなく利息ゼロ円の貯金が増え続けるのでしょうか。
1千-1500万円が非課税となる「祖父母などから教育資金、あるいは結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」がもっと知られてもよいものです。あまりに使われないからと現政府は廃止しようと動きました。知らせる努力もせずに言語道断です。
そして現在、各自治体では小中学校や高校の廃校や統廃合の計画をしています。学校がなくなり子どもがいなくなる街になるとどうなるか。見ていてください。地域の働き手が消え、それが温泉地なら宿の灯が1軒ずつ消えていきます。子育てと観光は密接につながっているのです。学校をなくしてはいけません。女性が都市へと出ていってしまいます…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2025年1月1日号)
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