「100年後も雪国であるために」
皆さんの地域では未来のあるべき姿を目標化できているでしょうか。例えば、新潟・群馬・長野3県7市町村にまたがる雪国観光圏では「100年後も雪国であるために」を目標としています。しかし、これがただのお題目になっていては意味がありません。もしかすると100年後には温暖化で雪は降っていないかもしれません。人口減少で人が住んでいないかもしれません。
そうした危機感をもとに今何をすべきかを示すロジックモデルを作りました。目標実現のためには、地域産業の維持と地域環境の維持が必要。そのためには担い手の確保やCo2の削減などが必要。といった具合に、トーナメント表を作るような感じで実践すべき要素を細分化し、事業者が今やるべきアクションを当事者が集まり洗い出しました。そして、働きやすい職場環境の実現というアクションに対しては職場定着率を、廃棄物の削減やリサイクルの実践には、顧客1人あたり廃棄物重量という数値目標を設定し共有します。
グリーンウォッシュという言葉があるように、頭ではわかっていても環境保全に対して実践が伴わないことが往々にしてあります。台湾では国を挙げて無料アメニティの廃止を打ち出しました。しかし、日本人相手の旅行会社は日本人にはアメニティを無料提供するというサービスを打ち出しています。タイではリターナブルボトルで水を提供していますが、日本人が来る時だけペットボトルに変えているホテルがあります。日本人が裸の王様になっていることがわかりますでしょうか。
雪国観光圏では、水源地に立地することから水道水を飲んでいただこうと活動を始めました。ただでは飲んでいただけないので、ウォーターサーバーに入れ替えロビーや湯上り処に設置しています。ビールサーバー式の蛇口にした宿では、喜んで水を飲んでいただいています。これにより自販機を撤去し、電気代を節約するとともに、国内外への地域ブランドの発信につなげています…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2025年2月25日号)
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