観光白書を読む 課題は15年前と変わらない
今月15日、「観光白書」が閣議決定され公表されました。観光白書の文章については「観光立国推進基本法」に基づき、その内容は「前年度の観光の状況及び講じた施策並びに同条第2項の規定に基づき、今年度において講じようとする観光施策について報告を行うものである」と規定されています。
令和2年度のCOVID−19に関連する施策については、昨年12月に観光庁が策定した「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に基づいて実施されてきました。その内容の後半には「国の支援によるホテル、旅館、観光街等の再生、魅力的な滞在コンテンツ造成、観光地等の受入環境整備」が挙げられています。しかし、これらの施策についてはこれまでも政府が積極的に取り組んできたことであり、COVID︱19の影響がなかったとしても、長年にわたる課題となっていました。実際、15年前に公表された平成18年度観光白書でも基本的な施策に大きな違いはありません(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/kankou-hakusyo/h18/images/02.pdf)。
ちなみに、「6章 観光に係る安全確保のための取組」には「旅行先の治安、テロ、災害、感染症等の最新情報の提供や広報活動に取り組む」とあり、すでに感染症リスクについても言及しています。
「第Ⅳ部 令和3年度に講じようとする施策」に関しては、訪日外国人旅行者を前提としている施策が圧倒的に多く、相変わらず政府のインバウンド偏重主義のスタンスはコロナ禍でも変わらないようです。その一方で、「第5節 更なる観光振興を図るための主要施策」には、休暇改革や持続可能な観光地域づくり、若者をはじめとした海外旅行促進、東北の観光復興など…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2021年6月25日号)
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