訪日観光再開を考える 円安の経済効果も捨て去る?−厳しすぎ入国制限
今月10日、COVID―19感染症の影響で往来が止まっていた観光目的の外国人旅行者に対する入国手続きが約2年2カ月ぶりに再開されました。米国や中国、韓国等、感染リスクが低いと認定された98カ国・地域が受入対象国として指定されています。
懸念するのは、政府が外国人旅行者に対する入国条件として、査証(ビザ)の取得義務やマスクの着用、民間医療保険への加入とともに、旅程管理と感染対策を徹底するため、添乗員同行のパッケージツアー限定とした厳しい措置を取っていることです。しかも、1日あたりの入国者数の上限が2万人と決められているため、1カ月で約60万人しか入国することができません。2019年には訪日外国人旅行者数は3188万人だったので、1日あたり平均約9万人(多い日は約15万人)のキャパシティにはまったく届かないレベルです。
政府は7月からはさらに1万人増やし、上限を3万人にすることを検討しているそうですが、現在の毎月1万人の増加を来年1月まで続け、上限数を9万人(年間3285万人)としなければ19年度並みの受入は不可能です。ただし入国者の中には日本人や外国人でもビジネス客や留学生、実習生も含まれ、観光目的の外国人だけとなると実際は上限9万人では十分とは言えないでしょう。
どちらにしても、1日も早い査証(ビザ)取得の廃止と入国者数制限の撤廃、個人旅行の自由化を認めない限りは観光目的の外国人旅行者が増えることはありません。実際、5月の入国者数は14万7千人でしたが(15日、日本政府観光局発表の推計値)、先月までは入国者数が1日あたり上限1万人だったにも関わらず、観光客がいなければ実際は5千人程度しか入国していませんでした…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2022年6月25日号)
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