大量集客から「稼ぐ」へ 事業者、地域の収益力を高める
誰もが理解していることですが、事業者や企業にとって「お金」とは「稼ぐ、儲ける」ことが一つの目的です。ただし、行政にとっては「お金」は「稼ぐ、儲ける」ものではなく、「予算」として「使い切る」ことが最大の目的であることはあまり理解されていないかもしれません。
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標に「稼ぐ地域」が位置付けられたとしても、稼ぐことを意識すらしたことがない行政職員にはマネタイズを推進させることは所詮無理筋なことなのです。
自治大学校の観光政策論の講師や地域活性化センターの講義などを通して多くの行政職員にマネジメントとマーケティングを指導する機会がありますが、皆さん頭でマネタイズすることを理解したとしても実際に施策や事業化にまで結び付けることは難しいようで、民間事業者とともに成果を上げるのは至難の業といった様相です。
特に観光行政では「稼ぐ」ことよりも「大量集客」が重要な目標となっていました。
しかし先月以降、政府から地方自治体に至るまで、外貨を「稼ぐ」ことに対してこれまで以上に意識せざるを得ない状況になっています。なぜなら、先月3日に召集された臨時国会の本会議における岸田首相の所信表明演説と11日に総理大臣官邸で開催された第16回観光立国推進閣僚会議において、訪日外国人旅行消費額を年間5兆円超にする目標を明確にしたからです。これまでの歴代首相の発言では「訪日外国人旅行者数6千万人」が重要な目標値でしたが、今回「5兆円稼ぐ」に変更されたことは観光政策にとって大きな転換期を迎えたと言えます…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2022年11月25日号)
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