国内旅行市場の二極化 日帰り減少から未来を見通す
秋の行楽シーズンになり、各地の紅葉や収穫、旬のグルメなど、旅行に関連する情報をメディアが積極的に取り上げています。視聴者の旅情を掻き立て、実際に旅行へ出掛ける人が増えることを祈るばかりですが、実際は日本人の旅行回数は年々減り続けています。
観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、2023年の日本人国内延べ旅行者数は4億9758万人(2019年比15・2%減、前年比19・1%増)であり、宿泊旅行は2億8135万人(同9・7%減、前年比21・0%増)、日帰り旅行は2億1623万人(同21・5%減、前年比16・6%増)でした。前年(22年)と比較すると増加傾向にはありますが、コロナ禍前(19年)の旅行者数ほどには回復していません。
宿泊旅行9・7%減の内訳を見ると「観光・レクリエーション(以下、観光)」は1・4%減、「帰省」19・7%、「出張」20・4%減であり、日帰り旅行全体21・5%減の内訳は「観光」19・0%減、「帰省」22・9%減、「出張」32・8%減でした。
コロナ禍からの回復度からすると、宿泊旅行「観光」だけがコロナ禍前に水準にまで戻っていますが、「観光」の日帰り旅行者は約2割も減ったままです。観光・レクレーションを目的とした同じ旅行であったとしても、宿泊旅行が増えて日帰り旅行が減ったと言うことは、市場の二極化が進んでいることを示していると考えられます。可処分所得と時間に余裕がある人たちは宿泊旅行に出掛けられても、どちらにも余裕がなければ日帰り旅行ですら行けなくなっているのです。
「帰省」と「出張」に関しては、宿泊旅行・日帰り旅行のどちらも約2―3割も減ってしまっています。家計や会社の旅費予算に余裕がなくなっていることもありますが、コロナ禍の間に在宅リモートワークなどのオンラインコミュニケーションが定着したことも影響していると考えられます。もちろん…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2024年11月25日号)
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