拡大続く訪日旅行市場 日本人旅行者の停滞も続く
2024年の訪日外国人旅行者の消費動向に関する調査結果(速報値)が1月15日に観光庁から発表されました。消費額は、前年比53・4%増の8兆1395億円となり、23年の過去最高額(5兆3065億円)を大きく上回っただけでなく、初めて8兆円を突破しました。JNTO(日本政府観光局)が同日発表した2024年の訪日外国人旅行者数は3686万9900人。前年比47・1%増とコロナ禍前19年(約3188万人)を上回り、過去最多を更新しています。歴史的な円安の影響と国際線航空便の回復がしばらくは続くことからも、インバウンド市場の成長は2025年も止まりそうにありません。
一方で、旅行者の急増とともに、特定の都市部や観光地に集中する観光公害のリスクを心配する声が年々大きくなっています。観光資源でもある自然環境や文化遺産の保全・保護、住民生活との調和が求められていますが、観光地における持続可能な管理体制に関してはまだまだ不十分であると言えます。地方への誘客による分散化に関しても、高付加価値な観光プロダクツ・特産品、多様な宿泊施設の不足や交通アクセスの改善がほとんど進んでいません。そのため、旅行者の消費が地方経済に波及するバリューチェーン・エコシステムが構築されず、外貨獲得の恩恵を地方が受けられずにいます。
また、慢性的な人手不足の中で優秀な人材の確保と育成にも手が回っていません。特に地方部では観光ガイドと宿泊施設・飲食店等の従業員の質的向上は必須です。最近の外国人対応は言語以外にも海外の多文化を理解したユニバーサルな受入環境の整備が急務です。なぜならば、国内外の富裕層市場や長期滞在型観光の促進を図るために質の高い旅行体験を提供し、客単価と粗利の向上を目指さなければ、人口減少による国内旅行市場の将来的な縮小に抗うことができなくなるからです…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2025年1月25日号)
- 年末年始の旅行動向 4分の3は旅行しない現実(25/01/09)
- 国内旅行市場の二極化 日帰り減少から未来を見通す(24/12/03)
- 人手不足の問題 成果に応じた待遇必要(24/10/31)
- テーマパークの転換 「量から質」で高収益を生む(24/10/02)
- 世界水準の国立公園化 ワンストップ窓口で地方旅行社に商機(24/09/02)
- 国内旅行の現状 物価高に無関係な層ねらう(24/08/02)
- 道路運送法の運用改善 旅行会社主体で地域観光交通マネジメントを(24/07/02)